中野研究室(物性デバイス)

研究内容

次世代パワー半導体の物性デバイス研究【バンド構造解析】

中野研究室(物性デバイス)

従来のSiやGaAsの物性限界を凌駕するSiC、GaN、Ga2O3等の次世代パワー半導体は電力変換制御・RF通信・太陽光エネルギー変換等のクリーンエネルギー分野において注目されている。中でも、既存の電気エネルギーシステムの革新的な省エネルギー化技術の開発は、オイルに依存しない新エネルギーの創出と共に世界的な喫緊の課題である。特に、今後のモビリティ社会の主役となる電気自動車・燃料電池車等のモーター駆動の省エネ化は国家エネルギー政策上極めて重要な技術的課題となっている。その中核技術として次世代パワー半導体を用いた電力変換素子(インバータなど)である超低損失パワーデバイスの開発が積極的に進められている。現在はSi (IGBT)が主流であるが、2020年代にはSiC (MOSFET)の本格的普及やGaN (MOSFET、HEMT)の実用化を目指している。更に、酸化ガリウム(Ga2O3)はこれらのパワー半導体よりも大きなバンドギャップ(4.8eV)を有するためSiC(3.2eV)やGaN(3.4eV)を上回る高電圧・大電流・低損失・高温度での動作が可能であり、ポストSiC・GaNの超低損失パワーデバイス用半導体として期待されている。

これらの優れた物性をデバイス特性として具現化するには、半導体バンドギャップ内に存在する電気的に活性な欠陥(欠陥準位)を極力低減する必要がある。当研究室では、次世代パワー半導体材料・デバイスを対象に、欠陥準位のエネルギー状態密度分布を、半導体接合部への光励起や熱励起などを利用した容量過渡分光計測法(SSPC: Steady-State Photo-Capacitance Spectroscopy、DLTS: Deep-Level Transient SpectroscopyTAS: Thermal Admittance Spectroscopy)を用いて接合容量の過渡応答特性から高感度に精密計測し、フォトルミネッセンス等の物理分析やバンド理論計算を組み合わせ多面的に物性評価・解析することで、半導体結晶評価、結晶成長やプロセス技術へフィードバックするインライン・プロセス評価技術の構築、デバイス特性との相関研究などを行っている。