形態と成分から機能と生態を追究する魚類生物学
本研究室は以下2つの研究手法を主軸とします。
形態学的手法
生物の「かたち」を調べる方法です。肉眼解剖学、組織形態学、電子顕微鏡による微細形態学が含まれます。
分析化学的手法
生物の「成分」を調べる方法です。質量分析を含めた分析化学のほか、「質量顕微鏡法」を用います。
こららの研究手法を組み合わせることで、対象となる魚がどのようなからだの機能を持ち、そしてその機能が生態戦略へどのように役立てるのかを考察していきます。これらの研究手法は、特に飼育が難しい深海魚や入手困難な魚種において、大いに力を発揮します。より良い結果を得るためには新鮮な標本の入手が不可欠であり、当研究室は教員と学生がそれぞれ積極的にフィールドへ赴きます。
主な研究テーマ
魚類の感覚器、特に視覚系における機能的意義の解明
魚類は脊椎動物において最も多様な視覚系を持っており、さまざまな環境で生息する各魚種での視覚系の構造を調べます。特に視神経細胞の計測から視野方向(視軸)や視力(視精度)を推定したり、視細胞の形態から色覚特性が推定できます。これらの結果から、視覚特性と生態との関わりを追究します。
発音魚における発音運動系の研究
一部の魚は、自ら「鳴く」発音魚です。しかしながら、発音魚に関する研究はまだまだ少ないです。発音魚の研究を通じ、魚類における発音の機能的意義と、ヒトとの進化生物学的な関係を追究します。
魚類の脂質成分を対象とした脂質生物学的研究
魚は陸上の動物とは異なる生体内分子を持っており、特に多価不飽和脂肪酸(DHAやEPA)を含んだ魚の脂質は我々ヒトの健康や医療に役立つ食品として有名です。加えて、近年は脂質組成の変化がヒトや動物の生理機能に大きく寄与することがわかってきています。しかし、食品や医療で役立っている魚の脂質が、魚自体にどのように機能しているかについては、いまだ未知な部分が多いです。本研究は形態学と分析化学を組み合わせた新技術「質量顕微鏡法」を主に用い、この謎に迫っていきます。