中部大学ワイン・日本酒プロジェクト

研究内容

日本酒プログラム

日本酒(清酒)は我が国の伝統的な醸造酒であり、カビの一種である麹菌 Aspergillus oryzae および酵母Saccharomyces cerevisiae という2種類の微生物を同時に制御しながら醸造する並行複醗酵と呼ばれる高度な製法が特徴です。酵母はアルコール醗酵を担うことから、日本酒に限らず世界の多くのお酒の製造において極めて重要です。

我々は、これまでにフヨウの花から醸造特性に優れた天然酵母を分離し、あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター(名古屋市西区)の協力のもと、この酵母を用いて東春酒造株式会社(名古屋市守山区)にて2016年から試験的醸造を行ってきました。酵母の分離源であるフヨウの花言葉は「「しとやかな恋人」graceful lover「繊細な美しさ」delicate beautyです。

第三回試験醸造を機に、この中部大学のお酒を「白亞(はくあ)」と命名しました。「白亞」は「春日井の丘、白亞あり」と校歌に歌われており、美しいキャンパスに建つ中部大学を表しています。ラベルの揮毫は、書家で本学教員の原田凍谷教授によるものです。

生産規模は年間500本~1,200本(4合瓶)で、(株)中部大学サービスにて市販しています。

2013年の研究開始より、本学応用生物学部の卒業研究生が参加してきました。2018年には学生が参加して、この酵母のドラフトゲノム解析を完了しました。これからも上質な大学ブランド酒の開発に取り組みます。

ワインプログラム

2013年「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、世界的和食ブームと共に、日本産の甲州ワインが注目されています。2000年代に入り、垣根栽培した糖度の高い甲州ブドウから上質なワイン造りを目指す動きが活発になりました。また、2000年代始めに、甲州種は、DNA解析から、ヨーロッパブドウ Vitis vinifera に極めて近い品種である事がわかり、甲州種による和食に合うワインが国内外で期待されはじめました。その後、2013年 甲州種がヨーロッパブドウ Vitis vinifera (71.5%)と東アジア系野生種 Vitis davidii (28.5%)の種間雑種であることが報告されました(酒類総合研究所、後藤ら)。一方、2010年には、日本固有の品種「甲州」は、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)に品種登録され、ますます期待が高まっています。現在、ワインの品質をさらに向上させるためには、いまだ日本では確立されていないウイルスに非感染な甲州ブドウ樹の作出と安定的供給が重要な課題として残されています。

我々は、これまでに成長点培養によるウイルス非感染ブドウ苗の作出と、ウイルス検査の確立を行って来ました。さらに、ウイルス非感染苗から実った糖度の高い甲州ブドウを用いた試験醸造を行い、ウイルス感染樹に比較してまろやかな味と香りのワイン醸造に成功しました。今後は、ウイルス非感染苗の作成方法の効率化、圃場で栽培したウイルス非感染ブドウ苗のブドウを用いた上級のワイン醸造を目指します。